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「ルクセンブルグ芸術賞」の受賞者は、

2023年度ルクセンブルク アートプライズ受賞者

第9回ルクセンブルクアートプライズの受賞者は、日本、フランス、ドイツのアーティストです:

第1賞:関根直子、日本
第2賞:フレッド・クラインバーグ、フランス
第3賞:ウラ・ハーゼ、ドイツ&ベルギー

受賞者は、2023年度版のために予定された合計金額を共有します。この金額は35,000ユーロ(約38,000米ドル)で、彼らが望むように使用し、独立した審査員によって確立された彼らのランキングに従って分配されます。それぞれ20,000ユーロ、10,000ユーロ、5,000ユーロを獲得します。

関根直子、2023年ルクセンブルクアートプライズ第1位

▸ 直子 関根は1977年に日本の東京で生まれました。2023年には46歳です。彼女は日本の千葉で生活し、仕事をしています。

彼女に影響を与えたアーティストには、サイ・トゥオンブリー、ゲルハルト・リヒター、ジェームス・タレル、ジャスパー・ジョンズ、マーク・ロスコ、ピート・モンドリアン、ソル・ルウィット、松谷武判(具体派メンバー)、杉木喜代(物派メンバー)、エル・アナツイ、スティーブ・ライヒが含まれます。

彼女は、第1位の賞金20,000ユーロと、博物館および審査員からの祝福を獲得します。このお金は彼女の好きなように使用する自由があります。

"長い間、風景について考え続け、それらを単なる空間の広がりではなく、影響力のある存在として考えてきました。現代の世界は人間によって形作られ、意図的なイメージと空間で満ちています。風景は最初に心の中に生まれ、建築や線に影響を受けます。彼らは内部と外部の要素を統合し、意識と環境を結びつけます。私の芸術的創造は、感覚的な経験を描くことによって、絵画の意味を意識と構造を通じて拡張しようとするものです。私の芸術的コンセプトは、日本の文楽人形劇とSteve Reichの音楽からインスパイアを受け、独立した要素のネットワークを形成することによって画像を作り出します。このプロセスは、フランスの先史時代の洞窟を訪れた経験からもインスパイアを受けています。今日、私はより抽象的な創造的モチーフを探求し、根本的な構造を探求し、新しい視覚的視点を開くことを目指しています。私の最近の作品は、ニューヨークに触発されており、都市の風景を線と色に縮小して、隠れた豊かさを喚起することができることを発見しました。私のMirrorDrawingシリーズは、絵画、ジェッソ、セラミックを組み合わせ、環境と観客の認識を反映する魅力的な反射面を創造します。将来的にはカラーの鏡作品も探求する予定です。"

選択された作品:
「ミラー・ドローイング-ストレート・ラインズ・アンド・ノスタルジア」(2022年、木炭と水彩、294.5 x 294.5 cm(116 x 116インチ))

説明:
2017年のアメリカ旅行中、私はニューヨークの都市景観に感銘を受け、モンドリアンの構図が実際には風景であると考え、この作品を創りました。アメリカの都市の風景はまっすぐな線と合理的な軌跡で特徴付けられ、層の歴史と意識的な深さを持つヨーロッパと日本の風景とは異なり、直線的な感覚を生み出します。この感覚は、白い表面、黒い線、原色の色彩から成るモンドリアンの作品を思い起こさせる簡約された要素に変わりました。モンドリアンは作品のタイトルに「ニューヨーク」という言葉さえ含めており、直線的な要素への郷愁を示唆しているかもしれません。

この作品は、異なるサイズの9つのパネルから成り、物理的な線と同時に絵画内の線を形成しています。モンドリアンの絵画とニューヨークの風景の思い出がこの構図を形作りました。線は鉛筆で描かれ、それからセラミックで磨かれ、周囲の環境と描画の鮮明な線が反映する反射面が生まれます。この効果により、構図と交錯する幽霊のようなイメージが生まれます。

この作品はMirrorDrawingシリーズの一部です。パネルはジェッソで準備され、鉛筆での描画を追加する前に水彩が塗布されます。セラミックで磨くことで、表面は光を反射し、観客と環境の動きが反映されます。視野角によっては、金属的な外観を持つことさえあります。作品には色のタッチがあり、徐々に現れ、カラフルな反射と画像のぼやけと融合します。

将来的には、カラフルな鏡を使用した作品をさらに探求する予定です。

フレッド・クラインバーグ、2023年ルクセンブルクアートプライズ第2位

▸ フレッド・クラインバーグは1966年にフランスのパリで生まれました。2023年に57歳です。彼はパリ、フランスで生活し、働いています。

彼を刺激するアーティストは、アンゼルム・キーファー、カラヴァッジョ、ディエゴ・ベラスケス、フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ、ゲオルク・バゼリッツ、ミケル・バルセロ、オスカー・ココシュカです。

彼は2等賞に相当する10,000ユーロを獲得し、博物館と審査員のお祝いの言葉を受けます。このお金の使い道は彼次第です。

"三十年にわたり、私は絵画とデッサンで具象的な芸術を栽培し、世界中で展示しています。社会現象に興味を持ち、私は個人的なものが私たちの状態に与える影響を検証しています。私の旅は私の考察と創造力を育み、テーマ別のシリーズで構築されています。"オデッセイ"(2016/2017)は亡命と移民を探求し、難民キャンプでの経験から得たものです。"We can be heroes"(2019-2021)は、インスピレーションを与える肖像画のギャラリーを通じてヒーロイズムを問い直します。最後に、"Red situation"(2022/2023)は内外の境界に焦点を当て、封鎖の文脈で都市生活と孤立を浮かび上がらせ、象徴的な意味を持つ赤色が優勢です。"

選ばれた作品:
「火星」、2023年、油彩、キャンバス、130 x 197 cm (51 x 78インチ)

説明:
「火星」と題されたこのキャンバスは、2023年に作られた油絵で、内部と外部の境界と曖昧さのテーマを探求する私の新しいシリーズの一部です。このシリーズは、COVID-19パンデミック中の隔離に関連するさまざまな側面の影響を受けた、都市性と孤立をポストモダンなメタナラティブで描いています。

この絵画は、シリーズ全体と同様、中心的な役割を果たす赤色に浸透しています。西洋では、赤は人類が最初に習得した色で、物質的、社会的、芸術的、夢のような、象徴的な意味で豊かな象徴的な色合いです。

火星は、空での赤みがかったオレンジ色の色合いのため、しばしば「赤い惑星」と呼ばれます。この色は、古代のギリシャ人とローマ人に、その赤さとの類似性から戦争の神の名前を付けさせ、歴史的および文化的な関連性を確立させました。

ウラ・ハーゼ、2023年ルクセンブルクアートプライズ第3位

▸ ウラ・ハーゼは1966年にドイツのキールで生まれました。2023年には57歳です。彼女はベルギーのブリュッセルで生活し、働いています。

彼女にインスピレーションを与えるアーティストは、アグネス・マーティンとアニ・アルバースです。

彼女は第3賞に相当する5,000ユーロを獲得し、博物館と審査員からの祝辞も受けました。この賞金は彼女の好きなように使うことができます。

"私の芸術作品は、材料、考え、行動の融合の結果であり、それらの性質と強度を探求しています。紙の上に線を引くことで、私は過去と現在を結びつけ、私の認識を変えています。私の芸術は、アクティブなジェスチャーと進化する材料にあり、全身を巻き込む瞑想です。私の選ばれた作品、"無題"(2019年)、はこの透明で複雑な織りを示す例であり、Archesのサテン仕上げの紙にPilot G-2ペンで制作され、木製の額縁に白で塗装されています。"

"無題", 2019年、Arches satiné上のパイロット青色ローラーペンG-2、114.5 x 125.7 cm (45 x 50 インチ)。

2022年度ルクセンブルク アートプライズ受賞者

第8回ルクセンブルク芸術賞の受賞者として、フランス人、トルコ人、ドイツ人&スペイン人アーティストが選ばれました。

1等賞:イラン・ヴォット、フランス
2等賞:セマ・マスキリ、トルコ
3等賞:エヴリーヌ・ヘレンシュミット、ドイツ&スペイン

2022年度の賞金総額8万ユーロ(約8万3千ドル)が3人の受賞者間で折半、授与されます。使途には限定条件がなく、独立審査員の選考による順位別に、5万ユーロ、2万ユーロおよび1万ユーロが授与されます。

2022年度ルクセンブルク アートプライズ1等賞 Ilann Vogt(フランス)

▸ Ilann Vogtは、1986年にカンペールで生まれました。今年36歳を迎えます。現在はフランスのカンカルで制作に取り組んでいます。

アンゼルム・キーファー、ロマン・オパルカ、アンニ・アルバース、エル・アナツイ、ペネローペ・ディタク、ホルヘ・ルイス・ボルヘスなどから影響を受けています。

1等賞の賞金として、美術館と審査委員からの祝福とともに5万ユーロを獲得します。賞金の使途は受賞者の自由裁断に委ねられています。

「私は毎日、織物作品の丈に応じて、細い短冊に切り裂いた紙を織りなして、様々なサイズの作品を制作しました。私の作品は、アルチュール・ランボーの「永遠」に始まり、ホメロスの「オデュッセイア」、フランス・カフカの「変身」、マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」に至るまで、世界文学の歴史を広く辿り、文章がイメージと関連付けられるような人間主義に根差した理想的な図書館を形成するものです。 地道な手作業により、アトリエでぽつねんと独り本と向かい合い、抽象と化しながら直接アクセスができるような記号をキャンバスに描いています。

ペネロペの神話やドゴンのモアレや宇宙進化論を心に取りつかれた私は、テクスチャーが現れるごとに物語を作るように一糸一糸、手作業を進め、作品の制作作業は何をおいても人生を掛けた作業であること、さらに創造力の可能性を飽くことなく追求しながら、この世に存在する本の数と同じ程の作品を作ることができるのだということを意識しているのです。」

選ばれた作品:
「レシの賛辞」2021年。切り裂かれた紙を織った作品、650×950㎝(256×374 in.)

記述:
展示された作品において、単に文章全体を採用するのではなく、「一つの文章に一つの作品」といった統一性を打破しようと考えました。様々な言語で書かれた文章の抜粋のみを、交差させたり接合させたりして、現在および過去の文明を映し出す織物を作りあげました。この巨大な作品の寸法は、パリのルーブル博物館に展示されているポール・ヴェロネーゼが1563年に制作した巨大な絵画、「カナの婚礼」にほぼ匹敵します。

セマ・マスキリ(トルコ)2022年度ルクセンブルク芸術賞の2等賞受賞者

▸ セマ・マスキリは1980年にトルコのエディルヌに生まれ、2022年現在42才です。トルコのイスタンブールに在住し作品を制作しています。

インスピレーションを受けたアーティスト:フランシス・ベーコン、ルシアン・フロイド、マックス・エルンスト、ミケランジェロ。

マスキリ氏に対しては、2等賞の賞金である2万ユーロ及び美術館と審査員による祝辞が授与されます。賞金の使途に制限はありません。

「私の作品は、人間の野蛮で未開な性(サガ)に言及しています。人間の心の内には、どこかに攻撃的な欲動が存在し続けていて、それは人間がいくら文明化したところで避けられるものではないのです。

私が人間を絵に描く時、その人間が持つ暴力的なものに意識を集中し、一部が押しつぶされたり歪んだりした解剖学的な人体が、絡み合い、野獣のごとくぶつかり合っている構成を考案します。

私は、人間を、倫理的価値観と動物的本能の狭間で身動きが取れなくなった存在として描き、人間の性(サガ)の複雑性についての問題を提起します。

私の作品には、人間の身体を未知の世界に放り棄てられたかのように表現したいと思ったものがあります。私自身が形而上学的と考える空間の中にそれらの身体を置き、並行して、空間の新たな扱い方を試みています。

2017年には、「権力が怪物を生む」と題した一連の絵を描き始めました。このシリーズの出発点は、一つの実体的存在が別の実体的存在を受入れないというテーマに基づいています。

このテーマについて制作し、考察し、更に書物を読んでいた時に、「権力の意志」に関してニーチェが書いた文章に出会いました。私は絶えず、権力とは何かを問い、このコンセプトに関する作品を制作し続けています。」

選ばれた作品:
「モブ・サイコロジー」、2022年(「群衆心理」、2022年)。油絵。110×85㎝(43×34 in.)

記述:
「この絵では、人間が集団を成した時に激化する本能的反応と、ギャングの精神構造の現象に意識を集中しました。これらは人類の歴史を通して絶えず存在し、現在もなお存在し続け、低開発のコミュニティでは時として不当な死者を生み出しているのです。

この作品は、多数派による少数派の抑圧およびあらゆる差別的思考を批判するものです。」

エヴリーヌ・ヘレンシュミット(ドイツ&スペイン)2022年度ルクセンブルク芸術賞の3等賞受賞者

▹ エヴリーヌ・ヘレンシュミットは1962年ドイツのエルトヴィル生まれで、2022年現在60才です。スペインのマドリッド近くに在住し、作品を制作しています。

インスピレーションを受けたアーティスト:カスパー・ダヴィッド・フリードリヒ、レンブラント、ガスパー-ピーター・ヴェルブルーゲン・エル・ヴィエヨ、クリスチャン・コックラー、ウィレム・ガーボン、

ヘレンシュミット氏に対しては、3等賞の賞金である1万ユーロ及び美術館と審査員の祝辞が授与されます。賞金の使途に制限はありません。

「私は幼少の頃、祖父、エミル・フランケのアトリエで初めて彫刻に触れました、その後、学校以外の様々な状況においても彫刻を学んできました。 またごく若い頃から陶器作家や彫刻家などの他のアーティストのアトリエに出入りしていました。1年間、鍛冶場で働き、マドリッドの鋳造所では溶接の仕方を覚えました。 その後、マドリッドのEFTI国際写真・映像学校に入学し勉強を続けました。2011年、49才の時には、米国のポロック‐クラスナー奨学金を獲得しました。

私の作品は、私生活、細かさ、エゴイズム、および不安に関する論証です。 絶えずミニマルな構造、幾何学的な純粋性およびスキームの軽快性を追求しています。存在の円形性、親交の必要性を探求し、究極的に唯一つの形、真の出会いに辿り着くということを考えています。」

選ばれた作品:
「Barcas de posibilidades o bardas del hambre」2008年。(「可能性の船または空腹の船」)真鍮、銅、青銅を溶接、古色加工した彫刻作品。寸法は、可変的。

記述:
「これはインスタレーション作品で、モロッコとスペインの間の不法移民問題に着想を得ています。タイトルは、空腹や物資窮乏から逃れるために海を渡りこれら2つの国の間の国境を越えようとする人々の悲劇的状況に言及しています。彼らは「約束された土地」に入るために、ノーマンズランドにおける非人間的な生活条件の下で、数カ月、ときには数年もひたすら待ち続けるのです。そこにたどり着ける者はわずか一握りで、多くの人は途中で命を落としたり、追い返され元来た道を戻らざるを得なくなったりしています。

私はスペイン南部のカディックス沿岸に住んでいたことがありますが、ひどい時は数十隻の座礁船がアフリカ船の墓場に流れ着くことがありました。このインスタレーションは、人間は生まれた場所によって、その繁栄の可能性が大きく異なることを表現しています。」

「Luxembourg Art Prize 2021」の受賞者3名は、

第7回Luxembourg Art Prizeの3名の受賞者は、ブラジル、カナダそしてリトアニア出身のアーティストです:

大賞:Celina Portella、ブラジル
第2位:Francis O’Shaughnessy、カナダ
第3位:Laisvydė Šalčiūtė、リトアニア

受賞者には、総額8万ユーロ(約10万米ドル)の賞金が、独立した審査員によって選考された順位に応じて配分されます。受賞者は、それぞれ5万ユーロ、2万ユーロ、1万ユーロを獲得し、賞金は自由に使うことができます。

Celina Portella(ブラジル)、Luxembourg Art Prize 2021 大賞受賞者

▸ Celina Portella、1977年、リオデジャネイロ(ブラジル)生まれ。44歳(2021年現在)。現在もリオデジャネイロに生活および活動の拠点を置いています。

影響を受けているアーティスト:Andrea Fraser(アンドレア・フレイザー)、Erwin Wurm(エルヴィン・ヴルム)、Helena Almeida(エレナ・アルメイダ)、Yvonne Rainer(イヴォンヌ・レイナー)、Ana Linnemann(アナ・リーネマン)、 Lenora de Barros(レノラ・デ・バロス)、Carmela Gross(カルメラ・グロス)、Trisha Brown(トリシャ・ブラウン)、Liliana Porter(リリアナ・ポーター)、Rebecca Horn(レベッカ・ホーン)、Fischli & Weiss(フィッシュリ&ヴァイス)、Robert Morris(ロバート・モリス)、Richard Sierra(リチャード・セラ)、Dennis-Oppenheim(デニス・オッペンハイム)。

彼女は、大賞賞金5万ユーロと美術館と審査員メンバーの称賛を勝ち取りました。賞金は自由に使うことができます。

「画像と動作そして身体における学際的な研究に興味を持っています。私の探求は、異なる媒体上で写真と映像の要素に関連をもたらすことです。近年、インスタレーション、特に身体の表現と空間との関係に問題提起をする作品に取り組んできました。複数のジャンルの交差を同時にもたらすことで、私はダンス、パフォーマンス、建築、映画、最近では特に彫刻の世界に触れるのです。

私の作品には振り付けの分野との深い繋がりがあります。ダンサーそして共同制作者としてのプロの経験から、身体の動きとその表現の課題に非常に興味を持っています。

初期の映像作品の後、私は作品に建築の重要性を取り入れながら、実物大の身体の投影と画像の重ね合わせについての徹底的な研究を進めていきました。投影は、映像と画像媒体における特定の問題提起そして新しい伝達媒体やテクノロジーの探求へと私を導いてくれました。

そこで私は、本来の仮想領域にオブジェあるいは彫刻の世界を実質的に加えたフレームの限界と相互作用して身体が画像に現れる連作を作り始めました。身体と媒体間の相互作用を提案することで、パフォーマンスと媒体が融合し切り離せないものになるよう、作品自体の構造要素である写真と映像の制作を追求しています。

私の作品の重要点は、仮想現実と身体の動作間の限界に集中することであり、それらの境界線を曖昧にして現実をフィクションの世界と混同させようと試みています。トロンプ・ルイユの技巧と伝達媒体の根本的な同化と、物質と実体のないもの、世界の客観性と幻想の間の曖昧な領域での制作に取り組んでいます。 」

選考作品:
「Corte/1」(カット/1)、2019年、写真・カッティング、135x95 cm (53x37 in.)

作品説明:
「『Corte/1』の作品では、写真が印刷された紙は、実際に画像の中で表現されている動きと連動するよう物理的に裁断されています。この作品は、画像、写真、映像、キャンバスなどの作品の中で表現された動きを具現化するシリーズ作品のひとつです。私の身体が画像と相互作用することで、画像を具現化する紙を切り取り、私自身の表現を修正し、画像と素材の繋がりを作り上げます。 」

Francis O’Shaughnessy(カナダ)、Luxembourg Art Prize 2021 第2位受賞者

▸ Francis O’Shaughnessy、1980年、レヴィ(カナダ、ケベック州)生まれ。41歳(2021年現在)。カナダ、ケベック州モントリオールに生活および活動の拠点を置いています。

影響を受けているアーティスト: Sally Mann(サリー・マン)、Alex Timmermans(アレックス・ティマーマンス)、Borut Peterlin。

彼は、第2位の賞金2万ユーロと美術館と審査員メンバーの称賛を勝ち取りました。賞金は自由に使うことができます。

新型コロナウイルスのせいで、習作のための題材を受け取ることができなかったため、写真の研究を続けるのが非常に困難な状態でした。そこで、独自のデジタル表現を湿板に変えるために、コンピューターの前に撮影装置を設置することを思いつきました。以前の作品を見直して「再コンテキスト化」し、自分のお気に入りを再解釈したかったのです。その結果が興味深いことは明白だったので、一連のシリーズを作り上げました。このようにして、私は昔の手法を今日の技術でしっかりと蘇らせたのです。

湿板写真は、写真の起源(1851年)である昔ながらの手法で、デジタル画像の流れに逆らうものです。簡単に言うと、コロジオンという黄色がかった液体を作り、それをアルミプレートに塗る技術です。次にこれを撮影装置に挿入して撮影します。さまざまな化学成分を用いて、プレートをネガティブ、次にポジティブ現像します。アルミの原型にコーティングを施し、世紀をまたいでも印画を無傷に保つことができるようにします。仕上げは、プレートをデジタル化し、大きなサイズで印刷ができるようにします。

この伝統的な媒体を使用して、エラー、アクシデント、不完全さ、不鮮明な質を強調することにより、画像の具体性に疑問を投げかけています。非常に興味深い完全に手作業の技術です。また、私は感覚を刺激するアートに身を投じたいと思っており、無形のものと機械(コンピューターでポストプロダクションを行うこと)のために人間を頼りにしています。これは総体的には進化の逆行と言えます。私の暗室が編集のソフトウェアなんですから。私は時代遅れの前衛芸術、最新技術の手法と過程に抵抗する現代写真家にスポットライトを当てた芸術活動に自分は参加してるんだと考えるのが好きです。

湿板写真の制作の中では、決め手になる瞬間はありません。時間しかないのです。それは「スローフォトグラフィー」のスピードに合わせること。私は瞬間を記録するよりも、むしろ時の流れを記録しているのです。板の上に流れ出て、時間と共に乾いていくコロジオン溶液で、時間の痕跡を読み取ることができます。すべてがスピーディーな時代に、その価値が認められたスローなスピードで作業が行われる「スローフォトグラフィー」なのです。」

選考作品:
「Plaque 58」、2020年、湿板写真

作品説明:
「2021年より、絵画的な性質の偶発性をもっと引き起こそうと試みています。これが、私の制作研究の新たな方向性です。作品の中で絶対的な質感を高める方法を理解するのに、成功・失敗作含め160枚以上の湿板写真を制作する必要がありました。これらの絶対的な質感は、現実の描写から一部離れながら、ところどころ絵画に類似しているものがあります。新型コロナウイルス発生当初より、私はこの研究に対し(ネオ)ピクトリアリズムへの回帰は求めていません。しかし、絵画の複写ではない写真を介した現代絵画のアイディアは模索しています。強烈なイメージを得るために、作者の狂気と偶発事を推進する作品を引き出し、見る者に強い視覚的メッセージを残すようにしています。」

Laisvydė Šalčiūtė(リトアニア)、Luxembourg Art Prize 2021 第3位受賞者

▸ Laisvydė Šalčiūtė、1964年リトアニア生まれ。57歳(2021年現在)。

影響を受けているアーティスト: Barbara Kruger(バーバラ・クルーガー)、Grayson Perry(グレイソン・ペリー)、John Baldessari(ジョン・バルデッサリ)、Louise Bourgeois(ルイーズ・ブルジョワ)、Neo Rauch(ネオ・ラオホ)、Marcel Dzama(マルセル・ザマ)、Hernan Bas(へルナン・バス)。

彼女は、第3位の賞金1万ユーロと美術館と審査員メンバーの称賛を勝ち取りました。賞金は自由に使うことができます。

「Luxembourg Art Prizeに応募した作品は、『Melusine’s Paradise』シリーズの作品です。ベイズ統計学から発想を得た、時には挑発的で面白い、大人向けの視覚的な物語です。これらは、状況観察の際に情報の一部のみが知られている確率を決める確率定理に基づいています。『アンチスパム』のプログラムは、ベイズ統計学を基に作られました。

『パラダイス』は、最も幸福で環境にやさしい場所であり、『スパム』は、『情報公害』の原因となるゴミでしかないということに意義を唱える者は殆どいません。スパムは、環境にやさしい存在ではないのです。私達の日常生活では、お涙頂戴物のコンテンツに埋もれ、『ストーリーを語る』デジタル情報や画像に囲まれています。それらは考えを視覚的に変換し、混乱を引き起こし、情報を限りなく希釈するものです。私は、このフロー型の視覚や情報は環境に良くないと感じ、それに対抗しようと試みています。それゆえに、『エコフレンドリー』な制作方法に焦点を当てています:皆がペットボトルを回収するのと同様に、私は興味のある画像やインターネット上でランダムに選んだ文章を回収し、リサイクルしています。それらを逆説的な原理で文脈や意味を変えながら書き直し、大人向けの視覚的なおとぎ話を作るべく、新しい作品に使用しています。おとぎ話や物語は、それ自体がひとつのメディアです。太古より、人類はスピリチュアルかつ具体的な体験をユニバーサル言語である物語で表現しています。それは、私の作品で手に入れたいものでもあります。Mélusine(メリュジーヌ)、私の架空の『アンチ・ヒロイン』は、私の大部分の作品の中で描かれています。それは、我々の現代生活での人間関係、地位や反社会的地位について皮肉的かつ隠喩に富んだ方法で表現されています。同時に、我々の消費社会の芝居がかった欺瞞やその最大の価値である『幸せな生活』の追求によって動機付けられ、そこから浮かび出る悲喜こもごもの愚かさも表現されています。」

選考作品:
「The Rape of Europe」(ヨーロッパ略奪)、2019年、木版画・油彩・アクリル画、159 x 159 cm (63 x 63 in.)

作品説明:
「目が輝き、後光がさした人物は私が生み出したものです。神話や欧州の民間伝承の人物、Mélusine(メリュジーヌ)またはMelusina(メリュジーナ)から発想を得たもので、近年のすべての作品に登場しています。これらの作品の制作手順は、まず木版画の制作から始まります。次に絵はキャンバスの上に転写されます。スプーンを使っての手作業で、油彩絵具をキャンバスに綿密に擦ります。キャンバスが乾いたら、絵の具で仕上げをします。技法の参考映像:https://youtu.be/wC2iAaOGiVs
2019年、イタリア人彫刻家Gehard Demetzとの展覧会『Coming Out』のために、マントヴァ(イタリア)のドゥカーレ宮殿美術館から招待を受けた際に、Melusine(メリュジーヌ)の人物像を取り入れた連作を制作しました。ドゥカーレ宮殿美術館での展覧会のために私が選んだ表現媒体は、偶然ではなく必然的なものでした。私が使用する技法は、多くの手作業そして膨大な時間と忍耐を要するものです。この選択は、宮殿内にすでに存在する作品の作者達や彫刻家Gehard Demetzとのディアローグと同化するものでした。この展覧会を考えながら制作した作品は感情に関するもので、(自己への)皮肉を交えているものです。まず、感情を感じるには肉体を必要とします。これらの作品制作には自分の手を道具として使用しました。手は、感情の棲む場所、脳と緊密に繋がっているからです。手作業で木を彫りました。木も感情を感じることのできる体を有しており、それぞれの物語があります:幹が伸び、芽を吹き出し、周囲では様々な事が起きて、突如誰かに切られる。木を彫りながら、その木の物語を聞き、現代人の感情に関する新しい物語をキャンバスの上に描いています。」

Lionel Sabatté(リオネル・サバテ)、Luxembourg Art Prize2020大賞受賞者

▸ Lionel Sabatté(リオネル・サバテ)は1975年、トゥールーズ(フランス)で生まれました。パリ(フランス)とロサンゼルス(カリフォルニア、USA)に生活および活動の拠点を置く。

影響を受ける人物:Alberto Giacometti(アルベルト・ジャコメッティ)、Pierre Soulages(ピエール・スーラージュ)、Thomas Houseago(トーマス・オウセアゴ)、Paul Rebeyrolle(ポール・レベイロル)。

銀行口座振込の50.000€と美術館と審査員メンバーからの称賛を勝ち取りました。この賞金は自由に使うことが出来ます。

生命の領域と時間の経過による物質変化が、生きる痕跡を有する素材(埃、灰、炭、角質、切り株・・・)の収集を数年前より開始するプロセスから始められたアーティストの創作活動にて出合います。これらの要素が奇抜な方法で組み合わせられ、こうして生み出された作品は繊細さとともに「不気味な奇妙さ」をももたらし、深遠な奥行きの創造主が錆びついた島の小鳥、クマ、オオカミ、エミュー、フクロウ、またユニコーンなどと交わりあう、異なる性質が混合した動物寓話に命を吹き込みます。

絵画やデッサン、彫刻を操るLionel Sabatté(リオネル・サバテ)は、永続的な相互つながりの中で、すべての作品を対話させるように努めています。無機質や動物、すなわち有機物に関する彼の研究は、私たちを取り巻く状況や、私たちが私たちの環境の中で占領する場所についての包括的な熟慮に関わる、詩的で、感覚的で、当惑させる作品を生み出します。

「リサイクル活動家としてのSabatté(サバテ)の活動は、自然生態系保護や環境保護に関する懸念だけではありません。保護活動の「飛躍」とも言えます。このリサイクルは、おそらく、戦後の単純な「人文主義者」という言葉の中で、生命が生き延びるための懸念問題、また、定式化することの出来ない不可解な存在条件からの待ち望まれる脱出の糸口への期待を証明するものになるでしょう。パリの地下鉄シャトレ駅で行われた「ホコリ」の収集や、ペディキュアリストによる金属くず、木、セメント、枯れ木と角質をつなぎ合わせた接着は、往時の屑屋や、アフリカやアジアの不法投棄のゴミ山の中で、食べるため、交換するため、売るため、生き延びるために収集をする子供や女性を連想させます。Baudelaire(ボードレール)が語る屑屋は、Benjamin(バンジャマン)によると、「人間の惨めさが最も表現される人物像」は、すべてのもの(「古紙、コルク、骨、段ボールの切り屑、釘、割れたガラス、死んで公道に捨てられた猫や犬、法律に反するもの、髪の毛、要するに、売ることの出来るすべてのもの」)を拾い集める人です。ゴミ山、廃棄物、残留物、くずの中で、Victor Hugo(ヴィクトル・ユーゴ)は「花咲く牧草地」、緑の草原、命を見つけだしました。Sabatté(サバテ)の作品はこれらすべてを通して、作家ジーフリート・クラカウアーとルンペンプロレタリアート(「ボロ着のプロレタリアート」)(「屑屋、早朝 – 革命の日の夜明け)という人物像を比較するバンジャマンによる描出を私たちに理解させます。このように、西洋思想を中心としたテーマに関するあらゆる熟慮から離れ、これらに取り組むことを受け入れながら、自然と文化を往復する問題を理解しなければならないのです」 — Bernard Ceysson(ベルナール・セイソン)、2019。

選考作品
「皮下にある赤色の運命」2019年
キャンバスに油彩
130x130cm(51 x 51 in.)

作品説明:
「油とアクリルで描かれた私のキャンバスは、その豊かさを展開する造形の世界を中心に他の媒質との対話を生み出します。私は異なる色合いを融合させ、有機的で無機質な要素を作品にもたらす水性の側面に最も重点を置いています。鮮やかでコントラストのあるタッチを使用し、時間の痕跡、永続的な自然の変動、あらゆる生活様式の本質的な変化を反映させます。混沌(カオス)(ギリシャ神話で「カオス」は宇宙から生まれた最初の実体)とした美学に類似した、これらの神秘的な絵画にモチーフを浮かび上がらせることができるならば、想像力は、ある時は目、またある時は鳥、クラゲ、空から見た景色、また、その空自体をそれぞれのキャンバスの中に見出すことが出来る、見る人の自由に任せられるのです。」

Jenny Ymker
Luxembourg Art Prize 2019の大賞受賞者

▸ Jenny Ymker、1969年オランダ生まれ。オランダ、ティルブルフ在住彼女は。

彼女のメンターとするアーチストは:シンディ・シャーマン、フランチェスカ・ウッドマン、グレイソン・ペリー、ルイーズ・ブルジョワ 今回は、彼女のLuxembourg Art Prizeへの3度目の応募です。

彼女は、50,000€の賞金を獲得し、La Pinacothèque美術館代表エルベ・ランスラン、審査員、および美術愛好家から称賛を受けました。

「空想の世界は、現実よりもよりリアルに見える」

2013年以来、私は、写真を基にゴブラン織りのタペストリーを織る作業を続けています

本来、ゴブランという言葉は、パリのゴブラン工場で作られたタペストリーを指します。今日では、標準的な方法で織られたタペストリーはゴブラン織りと呼ばれています。私は、ゴブランという音の響きだけでなく、特にこの言葉に含まれる歴史的な暗示が好きで、この言葉を使っています。

元来、ゴブラン織りは、城の内部の壁の冷気を遮断するためのものでした。やがて、このタペストリーの装飾的機能が重視されるようになりました。従来、ゴブラン織りは歴史を綴っています。私は、過去から引き継いだ機織り技術を、現代的な形に変えて、現在の逸話を表現しています。

私の作品に描かれた状況を見た人は、そこからストーリーを連想します。私が特に心掛けたことは、多くを語りすぎないようにすることです。そうすることにより、私の作品を見る人に、自らのストーリーを重ねる余地ができます。ストーリーを連想させることは重要なことだと私は思います。なぜなら、ストーリーを語る人間の能力は、人間にとって、重要な要素だからです。私は、長い間、医療部門で働きました。そこで、人は、それがありきたりの話であっても、話をすることができなくなると、人が何かを語りたい、つまり、「物語を語りたい」という気持ちを徐々に失ってしまうということに気が付きました。

作品の新しいアイデアが生まれると、次に、それに適した場所、服装、靴、装身具を探します。

現場まで赴き、すべての状況を演出し、シャッターのタイマーで、または助手の助けを借りて、写真を撮ります。

私の作品の一大テーマの一つに自己喪失というテーマがあります。念入りに、昔の服装、鞄、靴を選びます。それらを身に着けて、環境の喪失感を強めます。

私がプリントではなく、機織りを選んだのも、この考え方が根っこにあります。

私の作品は、写真で永遠に記録する私自らの演出のようなものです。

私の作品では、私自身がモデルになっています。これは都合がよいのですが。なぜなら、私にとって、私は常に利用可能ですから。また、私にとって、これは創造プロセスの重要な要素でもあります。ある特定の「世界」を創造し、一時の間、その時間に自分を置き、その状況を生きます。

良い写真ができると、それを機織りのモチーフにします。機織り工とともに、ウールと綿の糸の色を選びます。その次に、いくつかのサンプルを織ります。このサンプルをベースに、変更と調整を加え、最終的なゴブラン織りになります。

画像によって、ゴブラン織りに色を付けるか、白黒にするか決めます。一部のゴブラン織りでは、特定の要素を活かすために、そのイメージの部分に刺繍を施し、作品のテーマを強調します。

私は、ゴブランの機織り技術と刺繍が大変好きです。色糸の迷路が全体で一つのイメージを描いているような感じが好きです。

私は素材の持つ力を利用して、作品を見る人が作品に近寄り、私が表現するものは、一貫して美しいものばかりではないと気が付いてくれることを期待しています。

選考作品
«Vervlogen (Bygone)»、2018年、装飾芸術、ゴブラン織り(タペストリー織り、ウールと綿)、193x291cm (76 x 115inch)

作品説明:
「このタペストリーは、断捨離を表現しました」

Ludovic Thiriez(リュドヴィク・ティリエ)
Luxembourg Art Prize 2018の大賞受賞者

▸ Ludovic Thiriez(リュドヴィク・ティリエ)。1984年フランス生まれ。 配偶者と子供たちとともにハンガリーで暮らしています。

影響を受ける人物:Adrian Ghenie(エイドリアン・ガーニー)、Albert Oehlen(アルバート・オーレン)、Cecily Brown(セシリー・ブラウン)、Gerhard Richter(ゲルハルト・リヒター)、Marlene Dumas(マルレーネ・デュマス)、Maurizio Cattelan,(マウリッツッイオ・カテラン)、Michaël Borremans(ミヒャエル・ボレマンス)、Neo Rauch(ネオ・ラオホ)、Peter Doig(ピーター・ドイグ)。

Luxembourg Art Prizeには初めての参加でした。

銀行口座振込の25.000€と美術館と審査員メンバーからの称賛を勝ち取りました。この賞金は自由に使うことが出来ます。

芸術的アプローチ:

人生は経験と感情の蓄積です。この考えから、私の絵画に対する創作プロセスを見出しました。異なるな要素やスタイルの積み重ね、新しいバランスを作り上げることでアイデアが生まれます。

子供の頃は、空想しながら過ごしていました。両親にはいつもぼんやりしていると言われていました。今は少し客観性を持ち、子供の頃の想像力と物語から着想を得ています。古い写真や自分自身のクリシェから、よくインスピレーションが沸いてきます。

絵の中に、刺繍や動物をよく使います。刺繍は世代間の知識の継承を表しています。私が拠点にしているハンガリーでは、それぞれの地方にモチーフとスタイルが存在します。刺繍の質により、家の中での女性の資質や技術が表されます。この技術は母から娘へと受け継がれていくものです。

動物は子供の想像の一部であり、物語の中でとても存在感があります。それを私が語るストーリーのシンボルのように使うことで、時にはそれら自身がキャラクターになります。

甘美さ、遊び、激しさ、優しさ、ずるさ、問いかけ、愛などを見つけることができる子供時代は、人間を表す素晴らしい鏡であり、時間が形作っていく純粋な素材です。子供はゆっくりと、多くの純粋さと素直さを持ち合わせた人として状態を意識していきます。その瞬間こそが、私が作品や研究に取り込もうとしているものです。感覚を再現するために、その変化のときを観察し、自分自身の瞬間を選び出し、テーマを映しこみます。私が尊敬する現代画家であるMichaël Borremans(ミヒャエル・ボレマンス)はある展示会で、より解説の必要がない絵ほど素晴らしい絵である、と言っています。私がキャンバスの中に異なる要素を「配置」するとき、この考えを常に念頭に置くようにしています。どの瞬間にストーリーを終えるのか、または、続くのかを見極めて組み立てることはとても難しいですが、面白くもあります。私が筆を進めるにつれて引き出される感情によって、ときに、キャンバスは自然に埋まっていき、ときに、とても純化された状態を保っています。

受賞作品:
« Le garçon du voisinage »(「近所の男の子」)、リネンキャンバス上にアクリル、インク、オイル、140 x 170 cm

解説:
子供たちが笑顔で遊び、笑っているのが見えます。また、この小さな男の子は、より抽象的に描かれています:「隣人」は警戒し不安そうにしています。もう一人の男の子はキャンバスの外にある、鳥を怖がらせている何かを指差しています。そして、消えてほかの何かに変わってしまう、夢の中のような沼地の真ん中にある、祖描の一時的で幾何学的な作図の黄色い線。

Jarik Jongman(ジャリク・ジョングマン)
Luxembourg Art Prize 2017の大賞受賞者

▸ Jarik Jongmanは、1962年オランダ、アムステルダムで誕生しました。現在、彼はアムステルダムに居を構え、活動しています。Adrian Ghenie、Anselm Kiefer、Peter Doigからインスピレーションを受けています。彼はウェイターとして就労しています。

Luxembourg Art Prizeへの応募2回目(2016年および2017年)

銀行口座振込の25,000€と美術館と審査員メンバーからの称賛を勝ち取りました。この賞金は自由に使うことが出来ます。

そのキャリアの中で、彼ははかなさ、存在論、宗教そして歴史の概念に夢中になりました。 作品の多くには、モーテルの客室、待合室と廃墟など何らかの形をした建築が含まれています。しばしばそこからは人の存在が失われ、奇跡や幻想的なタッチと共にノスタルジアや静観の感情をもたらします。

Luxembourg Art Prizeのために制作された直近の作品では、彼が現代の主な悲劇的発展として捉える物事に焦点を当てています。 どのパラダイムの変化と同じように、その基本は数十年前に築かれており、私たちはますます大きくなる混乱の中で拡大する世界を目撃しているのです。

社会経済の圧力、移民、難民問題、世界規模でのテロリズムそして世界レベルで懸念を生み出している機構問題。これらの問題が生み出す恐怖とコントロールできないことに対する感情に加え、ポスト真実の社会は拡大し、アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領のような人物を生み出しています。

彼はモダニズム、より正確には近代建築を、人生と人間社会の理想的なビジョンと進歩に対する信念を秘めた夢想家としてのエスプリを表現するアイディアの出発点として用いました。モダニズムは、新しい建築フォルムと社会改革の融合によって非常に強調されており、神のいない世界の中での人間の完璧さを信じる、より開かれた透明性の高い社会を生み出しています。

ヨシフ・スターリンの台頭は、エリート主義追求のためにソビエト連邦政府にモダニズムを放棄させました。ドイツのナチス政権は、モダニズムをナルシストであり抽象的、「ユダヤ人」や「黒人」らしいと見なしました。ナチスは「退廃芸術 」と名付けられた展覧会で、精神病患者の作品の横にモダニストの絵画を展示しました。「フォーマリズム」であるという非難は、キャリアの終焉だけでなく、もっとひどい状況に見舞われることをも意味したのです。そのため戦後、多くのモダニストたちは、自分たちを全体主義に対する最も重要な盾、つまり「炭鉱のカナリア」であったと考えたのです。

彼のLuxembourg Art Prize応募作品には、これらのアイディアが取り入れられています。 その目的は、切迫感を伝えることです。そして、その作品には、火が重要な役割を担っています。火は変革、常に変化する世界を表す古いシンボルです。

シンプルな機能から象徴的なステータスまで拡大解釈されたこれらの建物や邸宅を、彼は近寄りがたく、怖ろしい力によって渇望され、脅かされた美しく卓越した構造として描いています。

脅威という感情は現実的なものです。近寄りがたく、怖ろしい力が現代性とイリュミネーションのシンボルを覆いつくすのです。

"It’s Gonna be Great, it’s Gonna be Fantastic" - 2017 - パネル上のオイル - 180 x 244 cm

John Haverty
Luxembourg Art Prize 2016の大賞受賞者

▸ John Havertyは1986年、アメリカ合衆国ボストンで誕生しました。アメリカ国籍を有する彼は、マサチューセッツ州に拠点を置いています。彼がインスピレーションを受ける芸術家はディルク・ボウツ、ヒエロニムス・ボス、サルバドール・ダリです。

銀行口座振込の25,000€と美術館と審査員メンバーからの称賛を勝ち取りました。この賞金は自由に使うことが出来ます。

シャーマニズムとも受け取れるJohn Havertyの絵画には、内観的な力がはっきりと表現されています。「私にとって、1つ1つの絵画が個人的な旅なのです」1960年代~1980年代のレトロなアルバムやスケートボードカルチャー、ホットロッドカルチャーに結びつきを持つJohn Havertyは、自分の興味の対象と旅をミックスさせています。「でも、私は人々に自分自身の観点から私の作品を目にしてほしいと考えています。そして、自分自身の意見を発展させ、そのイマジネーションを私の作品と結び付けて欲しいと思います」
気まぐれ、風変りさ、夢幻、美、醜さ、それらすべてはJohn Haverty の手から生まれるデッサンによって変わります。「作業中は我を忘れてしまうのです。まるで素晴らしくサイケデリックな風景の中にいる、好奇心あふれる子どものように」彼は、何時間もかけて自分を魅了するディテールやラインを描きます。彼にとってラインや点一つひとつが、複雑な絵画を作り出す重要な要素なのです。しかし、彼を導くアイディアが完全なものになることは滅多にありません。「1日たりとも同じ日はありません。クリエイティブなプロセスの中には今までに出会ったことがないようなものがあるのです。まるで、毎日が異なるように、全く同じ気分を味わうことがないように」作品を仕上げながら、彼はこの旅の中で味わった感情や思考を取り戻します。「写真は過去の現実を映し出します。でも、私の絵画が表すものは、過去の感情なのです」
このようにして、彼の記念すべきプロジェクトが生まれました。それは、2013年に彼が着手した巨大な作品「Gangrene(壊疽)」です。「私の作品は感染病のようなものです。それは、器質的に成長を続けるものなのです。「Gangrene(壊疽)」は、曖昧なビジュアルの悦楽を表しています。社会を辱めるような問題に光を当てるような…」
「Gangrene(壊疽)」はビジュアル的には暴力的で目に焼き付くような作品です。フレスコを構成する絵画の大半は、彼が20代の時に制作されました。それは、多くの人と同じように、道に迷いフラストレーションを抱えた時期で、その作品にはたくさんの感情が表現されています。John Haverty は自分自身を怒りを抱えた人物だとは考えていませんが、その作品の激しさの由来について次のように述べています。「10代のころ、ホラー映画をよく観ていました。驚かされた時の背筋が凍る思いや、クラシックな怪物の愛が私の旅の中に混ぜ合わされ、私に影響を与えています。ケープコッドの海辺にある私の家はどちらかというと陰鬱で、自分が実は幽霊なのではないかと思うほどでした。私は、自分がこういったことすべてに関心を寄せているのだと思っています」
その壮大な作品を前にして鑑賞者は、肉体的にだけでなく精神的にもその世界の中に引き込まれます。「自分の作品を言葉で説明するのはたやすいことではありません。私の興味はビジュアルです。私は、数秒という短い時間ではなく、人々の注意を捉えたいとのです」

« Circus »、2015年、シリーズ« Gangrene »、キャンバス地に鉛筆と水彩、120 x 120 cm、1点のみ

アルベール・ジャンゼン
Luxembourg Art Prize 2015大賞受賞者

▹ アルベール・ジャンゼンは、1989年ロシア、シビルスキーで誕生しました。現在26歳の彼は、ドイツ国籍を有し、オランダ、アムステルダムに居を構えています。彼は、ゲルハルト・リヒター、サイ・トゥオンブリー、ザオ・ウーキー、アントニオ・ムラドといった芸術家の影響を受けています。

銀行口座振込の10.000€と美術館と審査員メンバーからの称賛を勝ち取りました。この賞金は自由に使うことが出来ます。

私が観察するのは、イメージの基本的な側面、つまり線です。線は、環境を認識し理解する上で最も直感的な方法なのです。ビジュアル的な構造の認識は、線の認識によって変わります。これは、線の絶対的なシンプルさによるものです。線は非常にシンプルであるため、線なしにはデザインすることができないのです。線を使えばすべてを作り出すことができますが、線を作り出すことができるものは何もありません。線の根本的な構造に相当し得るのは、点でしょう。しかし、点が私のデッサンの中で重要な要素であるように、私はこれらを同じように基本的なものだと考えています。線の極限的ともいえるシンプルさが、独立した美しさを作ります。線は、線自体でのみ作り上げられるため、何のアイディアも表しません。その美の力を明らかにするために、線はそれ自体の基準になる必要があります。私が線を描くのは何かを作るためはなく、線を描くためなのです。私のデッサンに描かれるフォルムとモチーフは、線の動きを表すため以外の何物でもありません。私の線を目にする人物は、独立した存在に対峙するのです。

Albert Janzen

無題、2015年. 白地に5つの黒いフェルト(破壊される前に撮影された短期間だけの作品)。Forexにプリント。1点のみ。1/1版。150 x 200 cm